#126 ドキュメンタリー「プロフェッショナル 仕事の流儀 ジブリと宮崎駿の2399日」を見ると「君たちはどう生きるか」をもう1度見たくなるから皆んな見て!

映画好きの2人がNHKのドキュメンタリー作品「プロフェッショナル 仕事の流儀 ジブリと宮崎駿の2399日」を見た感想を話しています。これを見ると「君たちはどう生きるか」をもう一度見たくなるなります!

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#96 ジブリ映画「君たちはどう生きるか」感想編*警告後ネタバレあり:つまらなかった!と思った人に伝わってほしいいくつかの考察

NHKオンデマンド:プロフェッショナル 仕事の流儀 ジブリと宮崎駿の2399日

項目内容
放送日時2023年12月16日(土)19:30〜20:50
放送局NHK総合
番組プロフェッショナル 仕事の流儀
タイトルジブリと宮﨑駿の2399日
出演宮﨑駿、鈴木敏夫 ほか
語り橋本さとし、石田ゆり子
密着取材荒川格ディレクター(書生として通うことを条件に取材を許可された)

「ドキュメンタリーは事実」だと思って見ると損をする

僕はもともと、アニメ監督のドキュメンタリーを追いかけてきたタイプの人間です。作品そのものと、その裏側を、セットで楽しんでいる。同じような人、けっこう多いと思うんですよね。今回も、過去のドキュメンタリーで使われていた映像が入っていたりして、そのうえで、僕たちが知らなかった「引退宣言から『君たちはどう生きるか』完成まで」がメインに据えられていました。

最初に言っておきたいのは、これはおそらく賛否が割れる一本だということです。作り手の意図が透けて見えるドキュメンタリーだったから。ただ、そんなのは当たり前なんです。もしドキュメンタリーが事実をそのまま映すものだと思っている人がいたら、それはもう幻だと思ったほうがいい。どこにカメラを置くか、誰を映すか、編集でどこを落とすか。その選択だけでも全部が恣意的で、ある意味で悪意的ですらある。だから、そこに客観的な事実なんてものは最初から無いんですよ。

スティーブ・ジョブズがそうだったように、カリスマって一面的な人間じゃない。すごく聖人、というわけでもない。このドキュメンタリーを見てもわかります。宮崎駿という人、近くで一緒に働いたら相当に大変だろうな、という人物像が、ちゃんと出てくる。でも、それを補って余りある映像的な面白さがありました。

制作密着のはずが、気づけば「高畑勲への片思い」の記録になっていた

ひとことで言うと、今回のドキュメンタリーは『君たちはどう生きるか』の、カッコ付きの「公式っぽい答え合わせ」でした。解答編、という感じ。あえてカッコをつけたのは、必ずしも公式回答ではないからです。これが答えだよ、と見えるように作られた作品ではあるけれど、映像で語られていたことがそのまま正解だとは、僕は思っていません。

そのうえで、大きな流れとして何を感じたか。これ、宮崎さんと高畑さんの、ちょっとBL的なドキュメンタリーじゃなかったですか。BLといっても完全に宮崎駿の片思いです。高畑監督に対する、片思い。僕は二人の関係をある程度知っていたので、ああ、ここの話あったね、と納得しながら見ていたんですが、一緒に見た相方はもう驚いていました。ジブリのドキュメンタリーをほとんど見ていなかったこともあって、二人がこんなに感情の強い結びつきだったとは知らなかった、と。

このドキュメンタリーだけ見たら、もうそうとしか思えない。よくない言い方ですが、妄想がはかどる。これで何杯ごはんが食べられるんだろう、というくらいの強烈な作りでした。

「あれは創作のメタファー」がドンピシャだったかも

流れのなかで、大叔父のモデルが高畑さんだった、という発言がありました。これが大きい。というのも、半年前に僕は『君たちはどう生きるか』の感想編で、「あれは創作のメタファーなんじゃないか」と話していたんです。どんピシャでした。完全に当たっていた。相方は当時、「そんな個人的なことをそんなに入れる?」と反論していた覚えがあるそうですが、いや、完璧だったでしょう、と。

強いて引っかかっているのは、最初に異世界へ入ったときに書いてあった文言の解釈です。高畑さんを意識すると、少し意味が変わってくる気がする。僕は半年前、あれは後世に向けた「自分の真似をするな、俺の屍を超えていけ」というメッセージだと読みました。でも仮に高畑さんを意識していたとすれば、逆に「俺は高畑を超えていくんだ」という決意表明にも見えてくる。ここはまだ検討の余地があると思っています。それでも、創作のメタファーという読みそのものは外していなかった。だからこそ、この映画を、思いのこもった一本として、もう一度見たくなるんですよね。

ラピュタかナウシカか。30点と言われ続けた男のいじらしさ

ドキュメンタリーは、もう一回見返してもいいくらい情報量があります。鈴木さんが語ったエピソードも面白い。界隈では有名な話ですが、宮崎作品が高畑さんに「30点」と評された、というくだりがあります。ナウシカだったかラピュタだったか、僕も正確には覚えていないんですが、あの大作を30点と切り捨てられる。これ、心と心の話で、もうBLじゃないですか。相手にされていない感じが、かえっていじらしい。

現実の世界の人なのに、キャラクターものの登場人物以上にキャラが立ってしまっている。本当にそういう人なんだろうな、と思わせる存在感がありました。

「脳の蓋が開く」瞬間が、ちゃんと映像で残っている

もうひとつ面白かったのが、狂気の境界線というか、本人が「脳の蓋が開く」と表現していた状態です。創作に没頭すると、現実と虚構の境目が自分の中で無くなっていく。計算するんじゃないんですよ。その瞬間じゃないと作品が作れない、絵コンテが進まない。完全にゾーンに入っている状態です。

「これを描いて死ね」みたいな表現って、よくあるじゃないですか。あれが現実と虚構の入り混じる感覚として、ぐっと入っていく瞬間として、映像に収められている。見ているこちらには客観的な違いはわからないけれど、本人の中では今とんでもないことが起きているんだろうな、というのが伝わってくる。そこがすごかった。

本人は「記憶が飛ぶ」とも言っていました。プロすぎるだろう、と。過集中の状態だと、あれ、ごはん食べたっけ、みたいなことが普通の人にもありますが、そういうレベルじゃない。プロ中のプロです。ただ、記憶をなくすというあたりは、過集中の結果なのか、それとも歳によるものなのか、ちょっと判断がつかない話し方でもありました。老いの取り扱い方も含めて、踏み込んだドキュメンタリーだったと思います。

ナウシカに色を塗りながら終わる、あの締め

最後のカット、覚えていますか。「めんどくさい、めんどくさい」と言いながら、ナウシカの絵に色を塗って終わるんです。これが一部の人には、え、ナウシカの続編やるの? と受け取られた。匂わせて終わって、公式は何も言わない。続編をやってくれるなら、それはそれで嬉しいですけどね。

今回のドキュメンタリーでわかったのは、宮崎監督は基本的にもう絵コンテを描いて、あとは監修くらいの立ち位置になっているということ。実際にアニメの絵に起こすところは、もちろんチェックはしているけれど、別のスタッフが担っている。鈴木さんがどこかから連れてきた人で、恨まれているだろうな、なんて話もありました。その人が作った完成版を見て、宮崎監督は「映画、新しいね」と言う。言いたいことはあるけど何も言わんぞ、というおじいちゃんみたいな空気で、結局「新しかったね」って言っとるやん、という感じでした。

「変わらないですよ」と言った人が、変わってしまった

高畑さんといえば、『かぐや姫の物語』の話も強烈でした。「このままじゃ締め切りやばいですよね」と言われて、「いや、僕は別に完成しなくていいですけど」と返す。強すぎるメンタル。すごい人だったんだな、とあらためて思います。

構図がきれいに見えてくるんです。納期を守らず、ただただジブリのお金を消費していく高畑監督。それに振り回されながら、なんとか納期に間に合わせて、ジブリが存続できるように頑張る宮崎監督。だからこそ宮崎さんは、こんなに頑張っているのに、あの人ばかりが好き勝手にやって、なんで平気な顔をしていられるんだ、となっていた。でも尊敬はしていた。むしろ自分は高畑さんに届いていない、と考えていたのかもしれません。

高畑監督のお葬式のあと、「作品作りは変わりますか」と聞かれて、「いや、変わらないですよ、いつも通りです」と答えるシーンがありました。でも、結局変わってしまった。口で言っていることと、思っていることが違う。たぶん本人もあまり意識していない、無意識のところで出てしまっているんですよね。

いちばん大変だった人が、ニコニコしていた

相方が挙げていた、心に残ったシーンがあります。お葬式の周辺で軽口を叩いている宮崎さんの姿。そして最後のお別れのスピーチで泣いている宮崎さんの感じ。この二人、本当に二人だったんだな、としみじみくる。グッときて、泣きそうになる番組でした。高畑さんの引力、本当にすごい。あんな人と仕事をしていた周りの人たちもすごい。カリスマは遠くから眺めるものであって、僕みたいな一般人は近くにいちゃいけないんだろうな、と思います。近くで働いている人を、心から尊敬します。

僕が個人的に忘れられないのは、作画監督のインタビューです。すごくいい顔をして、「これからも作品を作り続けてほしいですね」とニコニコ語っていた。たぶんあの人、いちばんしわ寄せを食らう、いちばん大変なポジションだったはずなんです。それなのに、笑顔で「頑張ってほしい」と言う。あれが、ずっと心に残りました。

ジブリという会社の、いいところと、よくないところ

嫌がらせのために高畑さんをプロデューサーに据える、みたいなくだりもありました。よくない言い方ですが、ジブリって中小零細企業みたいなところがあるじゃないですか。縁故採用のいい面も、よくない面も出てしまっている。小回りが利く会社の良さでもあり、危うさでもある。今はもう、その制作部門も解体してしまいましたけどね。

『君たちはどう生きるか』を見た人は、全員見たほうがいい

これ、まだ多くの人が見ていないと思うんです。だから声を大にして言いたい。『君たちはどう生きるか』を見た人には、全員に見てほしい。ダブルで楽しめます。映画を見たうえでこのドキュメンタリーを見ると、答え合わせとして効いてくる。NHKだから見られない、なんてこともありません。

見る手段はこんな感じです。

見る手段ざっくりした特徴
NHKプラス放送から7日間の見逃し配信。受信契約があれば無料で見られます
NHKオンデマンド7日を過ぎたらこちら。見放題で月900円ほど、単品買いも可能

受信料を払っているのに、そのうえでプラスにもお金を出すのか、という気持ちは正直わかります。癪に障りますよね。でも、それを差し引いても余りある面白さでした。真実かどうかという話じゃなくて、純粋にエンタメとして楽しめる。

最初と最後の「めんどくさい、めんどくさい」で、ぐっと引き込まれます。タイトルどおり2399日、6年半ほどの記録です。それだけの時間の絵をつなぎ合わせたら、そりゃこうなるよな、という濃さ。あまりにも面白すぎて、つい人にすすめたくなる。そういう一本でした。

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