#221 映画「トイストーリー5」ネタバレ感想編:おもちゃにとっての幸福とは?アメリカの劇場で観て「ほぼ完璧だ」と思いながらうっすら泣いた理由

「トイ・ストーリー5」を見てきました。

今回は、ネタバレを大いに含みつつ、良かった点を三つと、そこから先の少し個人的な読み方まで話していきます。

字幕なしで見た人間の感想なので、セリフの細部は多少ずれているかもしれません。それでも泣けた、という話です。

トイ・ストーリー シリーズ 興行データ(2026年7月13日時点)

作品公開年監督製作費北米海外世界興収(ドル)倍率
トイ・ストーリー1995ジョン・ラセター3,000万2億2,300万1億7,800万4億120万13.4倍
トイ・ストーリー21999ジョン・ラセター9,000万2億4,600万2億5,100万4億9,700万5.5倍
トイ・ストーリー32010リー・アンクリッチ2億4億1,500万6億5,200万10億6,700万5.3倍
トイ・ストーリー42019ジョシュ・クーリー2億4億3,400万6億3,900万10億7,300万5.4倍
トイ・ストーリー52026アンドリュー・スタントン2億5,000万4億370万4億753万8億7,907万(公開中)3.5倍(暫定)
(参考)バズ・ライトイヤー2022アンガス・マクレーン2億1億1,830万1億810万2億2,640万1.1倍

※ 世界興収は Box Office Mojo / The Numbers の集計値。トイ・ストーリー5はドイツ公開(7月23日)前の途中経過です。


フロリダの劇場は、最後に拍手が起きた

僕が見たのはフロリダの、こぢんまりとした、けれどかなりあったかい劇場でした。老若男女がいて、終始大盛り上がり。エンドロールでは拍手まで起こっていました。日本の劇場ではなかなか見ない光景です。

面白さという意味では、ほぼ完璧に近かったと思います。テーマ的な部分で好き嫌いは分かれる映画ですが、。無駄なシーンがなかったんじゃないかと思います。ロッテントマトのスコアも90を超えていて、超上質、という印象でした。

オープニングでいきなり、かまされた

事前情報をあまり入れずに見たのですが、オープニングから結構興奮しました。バズ・ライトイヤーの軍勢が、謎の無人島に不時着するところから話が始まります。あそこは明らかにギャグシーンとして描かれている。後で読んだインタビューによると、ジャングルの照明は「地獄の黙示録」を参考にしたそうで、そういう目配せもある。

大量のバズは、ルックだけでもう笑ってしまう。気づいたら虫が大量に湧いていたみたいな見せ方をしたり、地面をわしゃわしゃ歩く群れが、まるでカニの大群のように動いていたり。キモさと怖さをちょっと混ぜることで、コミカルさを出している。

個人的には、2022年に公開されて、こけてしまった映画「バズ・ライトイヤー」の反動なんじゃないかと思っています。あれは真面目に作りすぎてこけた。今回はその揺り戻しとして、「ここは笑っていいところですよ」と、明らかにそういう作り方をされている。

こんなにバズがいっぱい出てくるとは知らなかったので、いい始まりでした。

気づいたら、主人公が代わっていた

良かった点を三つ挙げます。まず一つ目、これも意外だったところで、見事なまでに自然な主人公の交代が行われていました。

見ていない人のために説明すると、これまでは基本的にウッディが主人公の話でした。でも、ウッディの魂は3~4の時点でもう浄化されている。今の彼には、解決すべき課題がもはや残っていないんです。だから今回の実質的な主人公は、ジェシー。2で初登場した、ウエスタン調の、ウッディの相棒の女の子です。ウッディの立場は、前作までの主人公が一歩引いたポジション。これがいい塩梅でした。

聞くところによると、ウッディを出さない案もあったらしいです。実際、今回のストーリー自体はウッディがいなくても成立します。

でも、いることで、見たときのワクワク感や楽しさがまるで変わる。そういう意味では出して正解でした。しかも切り替わりがあまりに自然で、交代したことにすら気づかないくらい。冒頭のウッディの再登場も、ジェシーからの相談という形でするっと入ってくる。ここは本当に素晴らしい主人公の交代でした。

大まかな筋としては、ボニーのもとに新しいタブレットがやってきて、おもちゃたちが構ってもらえなくなる。「私ともっと遊んで」という、ジェシーの話です。

ドローンで、バズはついに飛んだ

良かった点の二つ目は、クライマックスです。どこまで話すか迷いますが、終盤に「これはやばい」という窮地のシーンがある。そこをどう切り抜けるのか、というところで、あのバズ軍団がようやく合流します。

構成としては、ジェシーの話とバズ軍団の話がずっと並行していて、最後に一本に合流する。違う話が同時進行して最後にユニオンする、完全にサウスパークのやり口です。

合流したあとにクライマックスを迎えるのですが、「こう解決するか」という意外性を正直、感じました。

驚いた理由は二つあります。一つは、今の時代を考えれば全然自然な解決法だということ。もう一つは、バズの名ゼリフ、トゥ・インフィニティ・アンド・ビヨンドとの関係です。あれは1作目で、自分は飛べると思ったバズが結局飛べなかった、という文脈でトイ・ストーリーがギャグとして使ったセリフでした。それがついに、ここで飛ぶ。

飛び方はドローンです。ドローンのおもちゃなんて普通に売っている今なら全然アリだし、何より時代を超えたファンへのアンサーになっている。ついにバズが本当に飛んだんだ、という。完璧だったと思います。

今回、倒すべき敵がいなかった

ここからはテーマの話に入る前の、伏線集めのようなものだと思って聞いてください。これまでの1・2・3・4には、ちゃんと敵役がいました。おもちゃを大事にしてくれない少年や、ロッツォのような悪役ポジション。ウッディは、その敵を倒すことで成長してきた。ある種のウッディの成長譚でもあったわけです。敵という抽象的なものを乗り越えることで、精神的に何かを越えていく。

でも今回は、明らかに敵がいなかった。だから、最後の場面を迎えたときに、ジェシーは成長したのか、という問いが残ります。

ウッディは敵を通して乗り越えてきたけれど、今回は敵がいない。課題はあって、解決しなければいけないものもあって、それは乗り越えたんだけれど、対になる敵役はいなかった。今までにない構成で、ある意味ひねっている。すごく面白い作りだと思いました。

子供の成長が不幸につながるという不憫さ

ここからは完全に、独断と偏見による分析です。トイ・ストーリーを見ていると、正直、冒頭のバズ軍団のあたりから、もう心の中でずっとうっすら泣いています。これはわかる人にはわかると思います。

理由は複合的なんですが、その一つを説明します。以前マンダロリアンの話をしたとき、5パーセントくらい不憫という気持ちが入る、という言い方をしました。トイ・ストーリーに関しては、50パーセント、いや、もしかしたら80パーセントくらい不憫が入っている気がするんです。

おもちゃたちの幸福は、子供に遊んでもらうこと。ただそれだけです。でも、子供の成長は、イコール、おもちゃで遊んでくれなくなること。成長そのものは、親目線でも子供目線でも本来ポジティブなものなのに、その人間にとってのプラスが、おもちゃにとっては不幸に直結してしまう。生き物としてのはかなさというか、そういうものが前提にある世界観の中で、彼らは生きている。

特に今回は、その不憫さが結構出ていました。一生懸命がんばる姿が、もう不憫で。ずっと涙腺が緩い状態でやられていました。もちろんそれだけが理由ではないけれど、大きな一つではあります。

神様が、こっちを振り向いてくれない

これを無理やり人間側に置き換えてみます。我々も、前提として死ぬ運命にある。死ぬとわかっているのに、何を目指しているのか、という話につながっていく。おもちゃが遊ばれなくなることを恐れて生きているのと、まったく同じ構造です。

少なくともトイ・ストーリーの世界では、自分の所有者は、どうしても神様として映る。そう考えると、1・2はその神様に認められようとする話、信仰の確立の話として読めます。3は神様が変わってしまう話。所有者がアンディから小さな子へ移る、いわば教会を出る話です。4は、神様がいない、持ち主のいないおもちゃを救おうとする話。ウッディが新しい伝道師になる。そういう筋だと思っています。

そして今回は、神様がちょっと信じられなくなる話、というか、神様が不在になりそうで、うっすらそれをする話でした。こういう話が、僕は大好きなんです。遠藤周作の「沈黙」、「桐島、部活やめるってよ」も、同じテーマだと思っています。神様がどうもこっちを振り向いてくれない、あるいは神様がいなくなって、人間はどう生きますか、という話。それもあって、うっすら泣きの上にこのテーマが乗っかってきて、いよいよやばいぞ、という感じになっていました。

途中、ジェシーがかつて遊んでいたタイヤのブランコのそばで、元の持ち主からのメッセージが思いがけず届く場面があります。あれは、いなくなった神様がまた喋ってくれた、という感じでした。神は沈黙しなかった。もっとも、あんな捨て方をしておいてそれはないだろう、という批判もあるらしいのですが。

トイ・ストーリー論を神様と重ねて話すのは、確かに独特かもしれません。ただ、この見方をすると、映画が綺麗に当てはまるんです。神の時代をどう生きるか。テーマ的なところまで、ちゃんと像を結んでくれる。

作品神(所有者)との関係状態
1・2神に認められようとする。信仰の確立神が在る
3所有者がアンディからボニーへ。教会を出る神が代わる
4持ち主のいないおもちゃを救う伝道神が不在
5すぐそこに在るのに、こちらを見てくれない振り向かない神

一番良かったセリフの話をしておく

最後に、一番良かったセリフを。締めのセリフでした。

自分の神様であるボニーは、いつか大きくなる。それをいつにするかは、私たちには決められない。大事なのは、必要とされたその時に、そこに居合わせるということ。

おおよそ、そういう言葉でした。

これがまた、さっきの神の時代をどう生きるか、にも当てはまってしまう。神様は、仮にいたとしても、救ってはくれない。でも、その中で、何かの巡り合わせで誰かの役に立った、必要とされた、という瞬間があれば、それを支えに、信仰なしでも生きていける。

そういうマインドの話として読めるんです。ジェシーは、本当にいい結論を出したと思います。

作品神(所有者)との関係状態
1・2神に認められようとする。信仰の確立神が在る
3所有者がアンディからボニーへ。教会を出る神が代わる
4持ち主のいないおもちゃを救う伝道神が不在
5すぐそこに在るのに、こちらを見てくれない振り向かない神

シリーズで何位か、と聞かれたら

1から5まで揃った今、何位になるのか。比べるものではないと言いつつ、あえて選ぶなら、僕はやっぱり不憫なやつが好きなんだと思います。その基準で言うと、3です。

3の何がすごいかというと、おもちゃにとっての地獄を見せてしまうところ。ここが君たちの行き着く最後の場所だよ、と焼却炉のシーンで見せてくる。地獄を軽く体験してきた、臨死体験のようなものです。だからあの脱出のあと、彼らは臨死体験を経た人になっている。最後はあそこに行くんだ、じゃあそれまでどう生きようか、という顔になっている。ああいうシーンに、僕には見えました。

入り口として、これほど勧めやすい一本もない

そういう事情もあって、シリーズの入り口としては、5はめちゃくちゃ勧めやすい。主人公も代わっているし、実質的にハッピーエンドだし、途中の不憫さも3ほどひどくない。

そして今回は、人間側、ボニーの側もしっかり描かれている。ここが過去作と違うところでした。子供がタブレットにハマってしまう様子が、最初は地獄みたいに描かれる。今どきの子、という感じで。ただ、なぜか全員、部屋を暗くしてやっている演出になっていて、そこはちょっと許せない。

5から入って、そこから2へ、ジェシーの初登場を見に戻る、みたいな新しい順序を提案する親も出てくるかもしれません。5しか見ていないという人も、今後は増えていくのかもしれない。旧作こそ、いっそリメイクしてほしいくらいです。

制作費は、例によってとんでもない。今回は2億5000万ドル。一作でジブリ映画が何本も撮れる規模で、今のレートにすると目の玉が飛び出ます。それでいて、すでに3倍は回収しているらしい。冒頭の表を見てもらうとわかりやすいのですが、このシリーズはだいたい制作費の5倍前後をペイしてきました。1だけは、もともと安く作った分、13倍から14倍という桁違いの回収です。

作品公開年監督製作費北米海外世界興収倍率
トイ・ストーリー1995ジョン・ラセター3,000万ドル約2億2,300万ドル約1億7,800万ドル約4億120万ドル約13.4倍
トイ・ストーリー21999ジョン・ラセター9,000万ドル約2億4,600万ドル約2億5,100万ドル約4億9,700万ドル約5.5倍
トイ・ストーリー32010リー・アンクリッチ2億ドル約4億1,500万ドル約6億5,200万ドル約10億6,700万ドル約5.3倍
トイ・ストーリー42019ジョシュ・クーリー2億ドル約4億3,400万ドル約6億3,900万ドル約10億7,300万ドル約5.4倍
トイ・ストーリー52026アンドリュー・スタントン2億5,000万ドル約4億370万ドル約4億753万ドル約8億7,907万ドル(公開中)約3.5倍(暫定)
(参考)バズ・ライトイヤー2022アンガス・マクレーン2億ドル約1億1,830万ドル約1億810万ドル約2億2,640万ドル約1.1倍

これで終わり、という気がしない

物語として、これで終わりだろうか。そうは思いませんでした。ここからジェシーの物語が始まって、もう一本、それを締めるフィナーレを作っても、全然自然だと思います。

過去作を見ても、次の作品まで10年近くかけていたりする。95年、99年、そこから2010年まで飛んで、次が2019年。今が2026年なので、7、8年経っている。

次をやるとしたら、初代から数えて32年目くらいになる。それだけ経てば、アップデートされた何かが出てきても、まったく不自然じゃない。テクノロジーがどうなっているかもわからないので、あらすじすら想像できません。ただ、俗に言われるように、時代が変わっても、おもちゃと子供の関係だけは変わらない。そういうところに落ち着くのだと思います。

日本語吹き替えキャスト

ウッディとバズの黄金コンビは続投です。新キャラには、話題性のあるキャスティングが並びました。

  • ウッディ … 唐沢寿明。シリーズ続投
  • バズ・ライトイヤー … 所ジョージ。シリーズ続投
  • ジェシー … 日下由美。シリーズ続投。今作の主人公
  • ボニー … 天野叶愛。おもちゃを愛する持ち主の少女
  • リリーパッド … 広瀬アリス。新キャラ。ボニーの元に届いた最先端のタブレット
  • ブレイズ … 白山乃愛。新キャラ。牧場の家に住む活発な少女
  • スマーティー・パンツ … 佐野勇斗。新キャラ。毒舌でおしゃべりなトイレトレーニング用のハイテク玩具
  • アトラス … 松井ケムリ/令和ロマン。新キャラ。道案内役のカバのGPS玩具
  • スナッピー … 井上和/乃木坂46。新キャラ。思い出の写真が宝物のデジカメ玩具
  • フォーキー … 竜星涼。先割れスプーンで作られたおもちゃ
  • ボー・ピープ … 戸田恵子。ウッディと共に捨てられた玩具を助ける羊飼い人形
  • ドーリー … 沢城みゆき。しっかり者のまとめ役ラグドール
  • レックス … 三ツ矢雄二。臆病で心配性のティラノサウルス
  • ハム … 咲野俊介。毒舌のツッコミ役、ブタの貯金箱
  • ミスター・ポテトヘッド … 遠藤純一。皮肉屋のジャガイモ頭
  • ミセス・ポテトヘッド … 松金よね子。ポテトヘッド夫妻の妻
  • スリンキー・ドッグ … 辻親八。胴体がバネの犬の玩具
  • トリクシー … 許綾香。元気いっぱいのトリケラトプス
  • ミスター・プリックルパンツ … 落合弘治。気難しいハリネズミのぬいぐるみ
  • コンバット・カール … 三宅健太。熱血の軍人玩具
  • デューク・カブーン … 森川智之。「カナダ最高!」が口癖のバイクスタントマン
  • バターカップ … ふくまつ進紗。見た目メルヘン、性格クールなユニコーン
  • ダッキー&バニー … 松尾駿、長田庄平。毒舌で息の合った掛け合いのぬいぐるみコンビ
  • カレン・ビバリー … 南真由。プラスチックナイフ製で、フォーキーと結婚した玩具

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