#186 【ネタバレ注意】映画「#真相をお話します」の真相をお話しします。原作大胆改変の真相と衝撃のラストを徹底解説
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「この映画、ただの暴露話じゃなかった――」
2025年4月に公開された映画『#真相をお話します』、もうご覧になりましたか?
原作小説を既に読んでいた私は、予告編を見た段階で「これは原作から大きく変わっているぞ…!」と感じていました。実際に鑑賞してみると、その予想は当たっており、まさに「大胆改変」と呼ぶにふさわしい内容でした。
今回は、原作との比較を交えながら、映画の「真相」と衝撃的なラストについて、ネタバレ全開で徹底解説します!まだ見ていない方は、必ず鑑賞後に読むようにしてください。
目次
原作は独立したオムニバス、映画は「生配信」で繋がる
まず、河野裕さんの原作小説『真相をお話しします』は、五つの独立した短編ミステリーから成るオムニバス形式です。それぞれのエピソードは、読後にゾッとするような「ヒト怖」や「意味が分かると怖い話」のテイストを持っています。映画のような、特定の二人の男性が登場したり、投げ銭付きの生配信が物語の軸になるような設定は、原作にはありません。
では、映画はどのようにこれらの物語を構成したのでしょうか?
映画では、原作のエピソードをそのまま描くのではなく、「真相をお話します」という暴露系生配信チャンネルを物語の核に据えました。そして、ビルの警備員である志田(菊池風磨さん)と、その友人である葉山(Mrs. GREEN APPLE大森元貴さん)が、このチャンネルを運営しているというオリジナルの設定を追加しています。
この「生配信」という形式が、本来独立している原作のエピソードを一つの物語として繋ぎ合わせるための巧みなギミックとして機能しています。
映画では、原作から選ばれたいくつかのエピソードが、この配信で語られる内容や、登場人物の過去として組み込まれているのです。
原作小説を読んだ身としては、映画がどのようにしてこれらの独立した話を一つの作品としてまとめるのか、予告編を見た段階から非常に興味津々でした。ポスターや予告編でメインキャラクターとして二人の男性が大きく描かれていた時点で、原作からの改変があることは察していましたが、実際に見てみると想像以上に大胆な変更でした。
「真相をお話します」チャンネルに隠された、ある男の「復讐」
映画オリジナルの設定である生配信チャンネル「真相をお話します」は、単なる暴露エンタメではありませんでした。このチャンネルを作ったのは、葉山(大森元貴さん)とその幼なじみである暴露チャンネルの管理者(岡山天音さん)です。
葉山の過去は、原作の『拡散希望』エピソードがベースになっています。彼は幼少期に、親が運営するYouTubeチャンネルでプライベートを晒され、さらに親しい友人や裏切りといった悲惨な出来事を経験しました。まるで『トゥルーマンショー』のような環境で育った彼は、そのトラウマを抱えながら生きてきましたが、不治の病を患い、余命が少ないことを知ります。
残りの人生で彼が選んだのは、過去の出来事に関わった人物(中条あやみさん)への「復讐」でした。そして、その復讐の舞台装置として作り上げられたのが、この「真相をお話します」チャンネルだったのです。
観客をも巻き込む、衝撃の「国民投票」
葉山の復讐は、ターゲットへの直接的な制裁だけではありませんでした。彼は復讐相手である中条あやみさんを拘束し、生配信に乗せます。そして、過去にこのチャンネルで匿名で秘密を暴露したり、他人のゴシップを楽しんだりしてきた視聴者たちに対し、究極の選択を迫ります。
それは、「復讐相手である彼女を見殺しにするか、それとも自らの匿名性(チャンネル登録時に提供した個人情報や暴露した秘密)を捨てて彼女を救うか」という選択を、視聴者一人ひとりが投票で決める、という前代未聞の「国民投票」でした。
物語のキーパーソンとなる志田(菊池風磨さん)は、この投票の最初の回答者となります。彼は当初、自身の秘密を守るために復讐相手を見殺しにする選択をしますが、『三角奸計』での凄惨な経験によるトラウマから、「人殺しはしてはいけない」と考え直し、匿名性を捨てる側を選びます。しかし、配信全体の投票状況は、彼女を見殺しにする側に傾いているように見えます…。
衝撃のラスト
映画のラストでは、結局どちらの票が多かったのか、最終的な投票結果は明確には描かれません。葉山は、この復讐の本質は、自分をコンテンツとして消費した親だけでなく、「匿名で他人の不幸を消費したお前たち(視聴者)が悪いんだ」として、傍観者だった視聴者一人ひとりを、善悪の選択を迫られる「当事者」にすることだった、と語り、映画は幕を閉じます。
観客は、登場人物たちの選択だけでなく、自分ならどうするか?という問いを突きつけられたまま劇場を後にすることになります。スッキリする結末ではありませんが、非常に強く印象に残るラストでした。
エンタメとして楽しめる見どころ満載の作品
実際に鑑賞した感想は、「スッキリはしないけれど、全体的に面白かった」です。文章で読者を錯覚させやすい原作のミステリーとは異なるアプローチですが、映画ならではの分かりやすさと、現代社会の闇(暴露文化や無責任な消費)を絡めたテーマ性が巧みに描かれていました。
特に、各エピソードの「悪役」たちの演技は素晴らしかったです。中でも『ヤリモク』での伊藤英明さんの怪演は、単なる悪役ではない、どこか滑稽で悲しいような深みがあり、本作一番の見どころと言っても過言ではありません。コメディタッチな雰囲気も持ち合わせており、非常に印象に残りました。伊藤健太郎さん(『三角奸計』)や桜井ユキさんといった他のキャストも、それぞれの役柄で強い存在感を放っています。
邦画のエンタメ作品として、見ごたえ十分で満足度の高い作品でした。評価は賛否両論あるようですが、肩の力を抜いて楽しむのが良いかもしれません。たまにはこういったエンタメ作品を見るのも良いですね。
約117分の上映時間も、物語の密度を考えると適度だったかと思います。
原作ファンは「こんな風に改変するのか!」という驚きを、原作未読の方は先が読めないサスペンスと、人間の倫理観を問われるテーマを楽しめるでしょう。
ぜひ劇場で、あなた自身の目で「真相」を刮目してください!