#293 映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』ネタバレ感想編:スピルバーグも3回観た話題作!はどこが面白い?トイレ休憩不可の3時間を乗り越えるための鑑賞法
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本日は、2025年10月3日公開の映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』(原題:One Battle After Another)についてお話しします。
主演はレオナルド・ディカプリオ。監督はポール・トーマス・アンダーソン。映画ファンの間では「スピルバーグが3回観た映画」として話題になっています。
目次
映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』のあらすじと概要
物語は、かつて革命家だった男・ボブ(ディカプリオ)が主人公。
現在は冴えない父親として平凡な生活を送っていますが、ある日、ショーン・ペン演じる軍人ロックジョーに命を狙われることになります。
ボブは次々と現れる刺客たちと戦いながら、最愛の娘ウィラを守るため、再び「戦い」の世界へと足を踏み入れていくというストーリーです。
映画体験の「面白さ」について
率直に言って、この作品は本当に面白い。
ただし、いわゆる王道のハリウッドエンタメ映画とはまったく異なります。社会風刺的でアート性が高いのに、結果的にものすごくエンタメになっている。
この二重構造の「面白さ」こそが、本作の最大の特徴です。
スピルバーグも3回観た謎の面白さ
スティーヴン・スピルバーグ監督がこの映画を3回見直したというエピソードがあります。
それは彼でさえ「この映画の面白さの構造」を分析するのに時間を要したということではないでしょうか。
一度では理解しきれない深み、それが本作の魅力です。
コメディタッチの緩急が絶妙
『ワン・バトル・アフター・アナザー』は意外にもコメディ映画としても楽しめます。
極限まで張り詰めた緊張感の中で、不意に挟まれるユーモア。
「笑っていいのか?」と迷うようなギリギリの笑いが随所にあります。
最初から「笑っていい映画」と思って観ると、より一層楽しめます。
鑑賞前に知っておきたい3つのポイント
① トイレのタイミングはない(本当に)
上映時間は約3時間。しかし、驚くほどトイレに行くタイミングがありません。
展開が速いか、遅いときはその分めちゃくちゃ面白いシーンか、どちらかです。
とにかく、観る前にコンディションは万全に整えておきましょう。
② 群像劇として観るのが正解
ディカプリオ主演ではありますが、群像劇として観たほうが楽しめます。
ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、レジーナ・ホールなど、それぞれが強烈な個性を放ち、物語を多層的に描いています。
主人公だけに感情移入しすぎず、複数の視点で観るのがコツです。
ネタバレありの感想・考察
主人公ボブ(レオナルド・ディカプリオ)
ボブは元革命家で、若い頃には暴力革命で人を殺めた過去があります。
しかし現在は冴えない父親。彼は劇中でほとんど成長しません。
むしろ、現実的で不器用な“普通の父親”として描かれています。それでも娘ウィラへの愛情だけは一貫しています。
敵ロックジョー(ショーン・ペン)と政治的テーマ
ロックジョーは極端な白人至上主義者。
彼はKKK(クー・クラックス・クラン)を模した秘密結社に入るため、ボブ父娘を襲撃します。
この映画には、反政府的テロリストと白人至上主義者という、アメリカ社会の両極を象徴する人物しか登場しません。
アンダーソン監督はこの極端な対立構造を通して、アメリカ社会の分断を誇張的に描いています。
結末を動かすのは娘ウィラ
最終的に敵を倒すのはディカプリオではなく、娘のウィラです。
彼女の機転が事態を収束へと導きます。ディカプリオは頑張るものの、最終的なヒーローではないという構造が見事です。
ベニチオ・デル・トロ演じるセンセイの存在感
ボブの味方として登場するのが、ベニチオ・デル・トロ演じる空手道場の先生。
彼は穏やかで有能、そして常に冷静。ボブの命を2度救い、まさにこの映画で一番「できる男」として描かれています。
まとめ:『ワン・バトル・アフター・アナザー』はわけのわからない面白さを体験する映画
『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、ジャンルの枠を超えた異色の作品です。
社会風刺、家族ドラマ、アクション、コメディ――そのすべてが一つに混ざり合っています。
3時間が本当にあっという間。王道ではないけれど、誰もが面白いと感じる不思議な映画です。
「見なきゃわからない」映画とはまさにこのこと。劇場では笑いも起きるほどの熱量。ぜひ、ディカプリオのドアップに笑い、このビッグウェーブに乗ってください。