#185 【衝撃】ヒュー・グラントが「思想ヤクザ」怪演!話題のA24ホラー『異端者の家』何がすごい?製作費の〇〇倍稼いだヒット作を徹底解説!
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2025年4月25日に日本公開が決定した映画『異端者の家』(原題:Heretic)が、既に海外で大きな話題を呼んでいます。特に、ラブコメのイメージが強かった俳優ヒュー・グラントが演じる戦慄の悪役ぶりが注目の的。
低予算ながら驚異的な興行収入を記録し、批評家からも高く評価される一方で、物議も醸している本作の魅力と、知っておくとより深く楽しめるポイントを徹底解説します!
目次
【ネタバレなし】『異端者の家』はどんな映画?宣教師が見た閉鎖空間の恐怖

物語は、モルモン教の若い女性宣教師、シスター・バーンズとシスター・パクストンの二人が、布教活動中に森の中の一軒家を訪れることから始まります。そこに住むのは、ヒュー・グラント演じるどこか掴みどころのない男性、リード氏。彼は二人に興味を示し、家へと招き入れますが、そこから状況は一変。家から出られなくなった二人は、リード氏によって仕掛けられた恐ろしい罠に閉じ込められてしまいます。
本作は単なる残虐ホラーではなく、リード氏と宣教師たちの間の息詰まる会話劇が中心。言葉巧みに精神的に追い詰めていくリード氏と、自らの信仰を試される宣教師たちの攻防から目が離せません。
驚異のヒット!製作費の〇〇倍稼いだ『異端者の家』の評価と興行収入
『異端者の家』は、人気スタジオA24が手掛けた作品です。製作費は1000万ドル未満(日本円で約15億円程度)と比較的小規模ながら、北米で約2800万ドル、全世界では約5920万ドル(日本円で約89億円、2025年2月17日時点)という大ヒットを記録しました。
この製作規模から見れば異例とも言える興行的な成功を収めており、批評家からも高く評価されています。レビューサイトRotten Tomatoesでは91%の肯定的な評価を得るなど、作品の質も保証済み。特に、これまでのイメージを覆すヒュー・グラントの悪役演技は絶賛されており、各国の映画賞でもノミネートされるなど、キャリアの新たな代表作となっています。
【作品理解度が激変?】知っておきたいモルモン教の基礎知識
映画を楽しむ上で知っておくと、より深く作品のテーマを理解できるのが「モルモン教」です。
モルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)は、今から約200年前、アメリカでジョセフ・スミスという人物によって開かれました。彼は天使モロナイから金のプレートの存在を知らされ、それを翻訳したものが教典である「モルモン書」になったとされています。他の主要な宗教に比べると歴史は新しいですが、世界中で熱心な布教活動を行っていることで知られています。
映画では、このモルモン教の宣教師である主人公たちが、その信仰を試されることになります。物語の背景にある宗教的な要素を知ることで、キャラクターたちの葛藤や、リード氏の主張の意図がより鮮明に見えてくるでしょう。
「モルモン教について少し知りたいな」と思った方には、実は人気アニメ「サウスパーク」のシーズン7第12話「ユタから来た転校生」が参考になります。
このエピソードは、モルモン教の創世物語を独特なユーモアと風刺で描いており、物語の途中で「マヌケ(Dumb)」を意味する合いの手が入る歌が印象的です。あくまでコメディとして描かれていますが、モルモン教の概要を知るきっかけとしては面白いかもしれません。
【"Joseph Smith was Called a Prophet"の意訳した日本語歌詞】
ジョセフ・スミスは預言者と呼ばれた(んだとさ)
彼がモルモン教を始めた(ことになっている)
ジョセフ・スミスは預言者と呼ばれた(らしい)
多くの人がジョセフを信じた
そしてその夜、彼は天使を見た(んだってさ)
ジョセフ・スミスは預言者と呼ばれた(とかなんとか)
彼は石と金のプレートを見つけたと(言ってる)
他の誰も、一度もそれを見たことがないのにね
そして、そうやってモルモン書は書かれた(ことになっている)
マーティンは家に帰り、妻の元へ行った
そして彼女にモルモン書のページを見せた
ルーシー・ハリスは賢い、賢い、賢い
マーティン・ハリスはマヌケ、くっだらない
ルーシー・ハリスは賢い、賢い、賢い
マーティン・ハリスはマヌケ。
だからマーティンはスミスの元へ戻った
ページが無くなった、と言ったんだ
スミスは怒ってマーティンに言った
「お前は(行って)祈ってくる必要があるな」と
物議も?モルモン教側のコメント
映画『異端者の家』は、モルモン教の宣教師を主人公としているため、教会側や信徒からも様々な反応が寄せられています。
LDS教会(モルモン教)の公式な声明としては、作中で女性への暴力が描かれている点について非難するものが発表されました。一方で、元モルモン教徒からは、宣教師たちの描写や置かれている状況がリアルであると評価する声も挙がっています。
キリスト教の専門家からは、リード氏が自分自身を神のように振る舞い、他人を支配しようとする姿が描かれている点や、ドストエフスキーの「神がいなければ、すべてが許される」という思想と結びつけて論じる意見なども出ており、様々な角度から議論が展開されています。
暴力ではなく言葉で追い詰める…ヒュー・グラントの「思想ヤクザ」怪演
本作の最大の魅力であり、恐ろしさの源泉となっているのが、ヒュー・グラント演じるリード氏です。彼は直接的な暴力だけでなく、巧みな言葉と仕掛けを使って宣教師たちを精神的に追い詰めていきます。
議論に参加した人の中には、その様を評して「思想ヤクザのようだ」と表現する人もいました。言葉だけで相手の信仰や価値観を揺るがし、自分のペースに引き込もうとするその姿は、まさに理屈や思想で追い詰める達人。ヒュー・グラントが、これまでのソフトなイメージを完全に覆し、観客を恐怖に陥れるその演技は必見です。
【ここからネタバレあり】閉鎖空間の「地獄」でシスターが見たものとは?
※この先は映画『異端者の家』の核心や結末に関するネタバレが含まれます。鑑賞予定の方はご注意ください!
リード氏の家に閉じ込められたシスター・バーンズとシスター・パクストンは、脱出を試みますが阻まれます。リード氏は彼女たちをさらに家の中、そして地下へと導き、まるで地獄のような階層を下っていくことになります。
地下に進むにつれて、リード氏の仕掛けや歪んだ思想が露わになっていきます。彼は「死からの復活」という奇跡を見せようとしますが、それは別の人物を使った巧妙なトリックでした。宣教師たちはこれを見破りますが、抵抗したことでリード氏の凶行を招き、シスター・バーンズが倒れてしまいます。
明らかになる「信仰」と「支配」についての真相
倒れたシスター・バーンズから取り出した物体を見て、リード氏はそれが世界がシミュレーションである証拠だと主張しますが、シスター・パクストンはそれが単なる避妊インプラントであることを認識します。これにより、リード氏の主張が虚偽であること、そして彼が全てを仕組んだことが明らかになります。
さらに地下の最下層に降りたシスター・パクストンは、そこに多くの女性が監禁されている光景を目撃します。そこで彼女は、リード氏が語る「唯一真の宗教」の正体、すなわち彼の信念が「他人を支配したいという欲望こそが、全ての宗教の根源である」というものであることを悟るのです。
予想外の展開とラストシーンに隠された希望?
リード氏の真の目的を知り、追い詰められたシスター・パクストンは最後の抵抗を試みますが、反撃されてしまいます。絶体絶命のその時、一度は倒れたと思われたシスター・バーンズが奇跡的に息を吹き返し、満身創痍ながらリード氏を倒すという予想外の展開を迎えます。まさに**「スカッとジャパン」的な逆転劇**と評した人もいました。
シスター・バーンズはその後力尽きますが、脱出したシスター・パクストンの手に一匹の蝶が止まるラストシーンは印象的です。議論では、この蝶が亡くなったシスター・バーンズの魂の象徴ではないかといった解釈が語られました。仏教においても蝶が魂や生まれ変わりの象徴とされることがあるという豆知識も紹介され、ラストシーンに希望や救いの示唆を見出す意見もありました。
【ネタバレ終了】ホラー苦手でもここまで読んだなら…劇場へ行こう!
ここまで、映画『異端者の家』についてネタバレを含めて詳しくご紹介しました。直接的な暴力やグロテスクな描写よりも、言葉と心理的な恐怖で観客を追い詰める本作は、ホラーが苦手という方でも、もしかしたら最後まで鑑賞できるかもしれません。
もしこの記事を読んで「ホラーは苦手だけど、内容が気になるな」と感じたなら、ストーリーの概要を知った上で鑑賞に挑むのもおすすめです。ヒュー・グラントの怪演、息詰まる会話劇、そして「信仰」や「支配」といった深遠なテーマについて考えさせられる『異端者の家』は、きっとあなたの心に何かを残すはずです。ぜひ劇場で、その「異端」の世界を体験してみてください!