#225 マンガ「アンダーニンジャ」18巻迄ネタバレ感想編:映画でギャグ漫画だと思っている人に伝えたいその後の展開と敵の正体
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福田雄一監督、山﨑賢人主演で実写化された「アンダーニンジャ」。あの映画だけを観て、なんとなくギャグ漫画だと思っている人が、たぶんかなりいます。違います。あれは入り口です。
原作は2026年8月に18巻が出ました。映画が描いたのは、原作でいうと8巻の途中までです。18巻まで読むと、映画で見た物語がまだ序盤だったことに気づきます。
この記事の後半には、九郎の生死と果心居士に関する大きなネタバレが含まれます。まっさらな状態で読みたい方は、18巻まで進めてから戻ってきてください。
アンダーニンジャとはどんな漫画か
まず基本情報を並べておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者 | 花沢健吾(アイアムアヒーロー) |
| 掲載誌 | 週刊ヤングマガジン(講談社)、2018年34号から連載中 |
| 既刊 | 18巻(2026年8月時点)、累計300万部超 |
| TVアニメ | 2023年10月から12月に放送 |
| 実写映画 | 2025年1月24日公開。監督・脚本は福田雄一 |
| 映画キャスト | 山﨑賢人、浜辺美波、間宮祥太朗、白石麻衣ほか |
| 受賞歴 | マンガ大賞2021 一次選考作品 |
物語の前提はシンプルです。太平洋戦争後にGHQによって解体されたはずの忍者組織が、実は今も日本の官民あらゆる場所に潜伏して暗躍している、という話です。
その数、およそ20万人ともいわれています。自衛隊と同じくらいの人数です。
そのうちの一人、末端も末端でニート同然の暮らしをしていた雲隠九郎に、ある日忍務が降りてきます。学校潜入ミッションです。九郎が高校に潜り込んで頑張る。これが映画の大きなプロットで、原作でいうと8巻の途中までにあたります。
漫画の1話はこちらで読めます。
実写映画から入った人が誤解しているところ
福田監督の作品というだけで、ちょっと特殊な見られ方をします。本格派のかっこいい忍者映画ではなく、ギャグテイストの入りやすい作りになっていました。入り口を若年層に広げようという狙いだったはずで、裾野を広げる映画としては正しかったと思います。
ただ、原作を知らずにあれだけを観ると、なんかちょっとふざけた漫画かな、という印象で終わってしまいます。そこがもったいないところです。
映画の終盤では、NINが持つ超兵器「遁」から宇宙経由のレーザーが学校に撃ち込まれます。消したいと思った存在を宇宙から消せる装置を、NINだけが持っている。
アンダーニンジャが大人にオススメな3つの理由
この漫画の面白さ1つ目は、過剰な説明やツッコミがない点です。
読者は主要人物のすぐそばにいて、視点としては神視点です。心の中も読めます。でも、その心の中を描写するだけで、誰も設定を説明してはくれません。結果として後から分かる仕組みにはなっているけれど、直接的な解説はほぼ入りません。だから読者は情報を組み合わせて、ということはこうなるんだ、と自分で推測していくことになります。
最近の人気漫画には、設定や状況を丁寧に説明する作品が多いです。アンダーニンジャは、その逆をやっています。ツッコミ役がいないことで、シュールな笑いが生まれているかもしれません。
考察の余地を残してくれる、というのが大人向けの理由の一つ目です。

学校編は大いなる前振りだった
映画を観た人にこそ言いたいのが、二つ目のポイントです。学校編そのものが、本筋のための巨大な前振りになっていました。
学校編が決着する以前に、謎の違和感がいくつも仕込まれています。
たとえば第1話。無職のニート忍者に、なんでこんな最新鋭の装備を渡すんだろう?、という引っかかりが最初から発生します。なんかわからないけど、こいつ何かあるな、という感じです。その答えが分かるのは、だいぶ後、17巻のあたりです。
誰もいない部屋が意味ありげに一コマ映ったりもします。観察力の異常に高い忍者たちが、この辺、変だな、ここ違和感あるぞ、とちょいちょい漏らします。8巻以降、それまで撒かれていた違和感の意味が少しずつ回収されていきます。
学校編が終わってからも、物語は一直線には進みません。現在の事件の合間に、登場人物たちの過去やNINの歴史が大量に挟まります。この人物にはこういう過去がありました、この人物にもこういう過去がありました、と過去編を延々とやります。
そこで出てくる設定がまた最高で、上忍・中忍・下忍の外側に「汁忍」という謎の存在まで出てきます。上忍・中忍・下忍の語感に便乗して作られた言葉だと思います。そういう忍者学校の話があったり、第1話から出ている加藤が、なぜNINから敵対視されているのかという話に入っていったりします。
セリフのないページが、読書スピードを狂わせる
現在の話も、モノローグ多め、セリフ少なめです。セリフがないページが多いので、読むのが異様に速いです。1巻を読み終わって、え、もう終わり、となります。お金を払っている側としては、ちょっと損した気分です。
でも、いいじゃないですか。タイパ・コスパの時代でしょう。みんなショート動画でドーパミンをドバドバ出しているんでしょう。だとしたら、むしろ今っぽい読み味です。
警告:ここから先、大きなネタバレが続きます。
主人公・雲隠九郎は8巻で〇〇
一番大きなネタバレから書きます。主人公の九郎、死にます。
8巻の68話。講談高校襲撃の裏側で、UNのくノ一・山田美月と斬り合い、敗れます。山田の鼻を切り落とすところまではいくものの、脇腹を斬られ、最後は口内に刀を突き立てられて頭部を割られる。かなり凄惨な描き方で、まさか主人公がこんな形で、と絶句した読者が大勢いました。
生存説やクローン説もありますが、ここでは作中で描かれた死亡を前提に話を進めます。
第1話から主人公だと思って読んできた雲隠九郎が、もういない。この出来事を境に、この作品の読み方そのものが変わります。
対立関係が複雑に
8巻までは分かりやすい構図でした。九郎が所属する正規の忍者組織NIN対、アンダーグラウンドの忍者組織アンダーニンジャ。タイトルどおりの二項対立です。
それが8巻以降、ぐちゃぐちゃになります。政府とNINとアンダーニンジャ、この三つ巴くらいならまだ理解できます。二が気持ちよくて、三が限界です。ところがアンダーニンジャは、それぞれの組織の内部がまた分裂していきます。もう追いきれません。
そこに、構図を再び二項対立へ引き戻す出来事が起きます。第1話から登場していた加藤中忍が、抜け忍という状態になります。そしてアンダーニンジャと接近し、融合していきます。では、その先の敵は誰なのでしょうか。

名前が思い出せない果心居士とは何者か?
出てくるんですよ。名前を思い出そうとしても、なぜか思い出せない人が。
漢字で4文字、ひらがなで5文字。果心居士です。この、思い出せない状態そのものを、僕は幻術と呼ぶことにしました。漢字は書けるのに、なぜか読めません。調べたはずなのに記憶から消えています。
果心居士は、室町時代末期から安土桃山時代にかけて登場したとされる幻術師です。
秀吉の前に死んだ女の顔を浮かび上がらせたり、処刑寸前に鼠に化けて縄を抜けたり。忍者かと言われると若干怪しくて、今風に言えばマジシャンとか奇術師の類いだったんだと、僕は思っています。それでも、忍者と幻術を結びつけて語られる古い人物ではあります。
名前の由来は人名ではなく称号
「居士」は在家のまま仏道を修める男子を指す号です。出家せずに僧侶に準ずる知識を持つ者、という意味合いで、千利休も晩年に居士号を授かっています。
果心居士はもともと大和の興福寺に僧籍を置いていたものの、外法に手を出したために破門されたと伝わります。「外法」は、仏教の正統な教えの外にある術や異端の法を指す言葉です。果心居士が伝説上の幻術師として語られてきたこととも、よく似合う言葉です。あの妙な引っかかりの正体は、人名というより称号だったわけです。
1982年の映画にも出ていた
調べてみたら、果心居士が出てくる映像作品がありました。1982年の東映・角川映画「伊賀忍法帖」です。原作は山田風太郎、監督は斎藤光正、主演は真田広之で、果心居士を成田三樹夫が演じています。
忍者映画というより、妖術、怪異、奇想が混ざった伝奇映画です。忍びの夫婦は親方が決める、という掟が出てくるあの時代の空気は、こういう世界観が好きな人にはたぶんかなり刺さります。僕はこのジャンルだと「ヒルコ 妖怪ハンター」が好きで、あれと近い匂いを感じました。この時代からすでに、果心居士は伊賀忍法帖の世界の住人として扱われていたわけです。
主人公は加藤中忍だ!
作品をもう一つ見つけました。司馬遼太郎の「果心居士の幻術」です。
短編集なんですが、目次を見てください。2作目に入っているタイトルが「飛び加藤」です。
加藤ですよ。しかも「飛び加藤」です。猿飛佐助のように、姓や名前に「飛」を持つ忍者は有名ですが、まさか加藤にも「飛び」がつくとは。この名前、ここから来ているんじゃないでしょうか。
飛び加藤こと加藤段蔵
しかも、果心居士の話を実際に読んでみたら、いきなり2行目に飛び加藤が出てきます。
飛び加藤という優秀すぎる忍びがいて、上杉謙信に仕えようとしたら、優秀すぎるがゆえに逆に殺されそうになった、というところから始まります。そして、その飛び加藤と同じくらい名を残した者は一人しかいない、それが果心居士だ、と続きます。
震えませんか。ここからは完全に僕の考察です。「アンダーニンジャ」の加藤中忍と、司馬遼太郎の「飛び加藤」が本当に直接つながっているのかは分かりません。ただ、「果心居士の幻術」という短編集の中で、果心居士と飛び加藤が並んでいます。
この二人を並べて読むと、どうしても「アンダーニンジャ」の加藤と果心居士の関係を連想してしまいます。偶然にしては、面白すぎる組み合わせです。忍者に詳しい人は、加藤がヤバそうだと最初から気づいていたのかもしれません。
間宮祥太朗くんを主人公だと思って読み返す
九郎が退場した後、雲隠九郎の兄弟を名乗る人物たちが出てきます。それぞれ魅力的に描かれてはいます。でも、加藤中忍ほどの因縁や引力が感じられないんですよ。雲隠家の内側には決して入っていきません。ここから主役の座を奪えるのか、という感じがずっとあります。
一方で、加藤は明らかに物語の中心に寄ってきています。抜け忍となった加藤がアンダーニンジャ側と接近していくにつれて、物語の中心にいる感覚が強くなっていきます。もし最終決戦で果心居士と戦うのが加藤だったとしても、僕はまったく驚きません。
だから、これから読む人にも、途中で読むのをやめてしまった人にも提案したいです。1周目は普通に読んでください。2周目は、加藤中忍を主人公だと思って読んでみてください。まったく違う漫画に見えます。実写映画で加藤を演じたのは間宮祥太朗さんですから、全国の間宮ファンは、推しが主人公の漫画だと思って読んでいいと思います。
伊勢新"九郎"こと北条早雲と風魔一族
名前つながりで、もう一つ考えていることがあります。こちらも完全に僕の妄想です。
北条早雲の本名は伊勢盛時。通称は伊勢新九郎です。九郎なんですよ。
そして、その伊勢新九郎が相模に進出した時代から、後北条氏に仕えて諜報や後方攪乱を担っていたとされるのが、風魔一族です。相模の足柄を拠点にした乱波の集団で、頭領は代々「風魔小太郎」の名を継いだと伝わります。
伊賀や甲賀と違って一つの主君にしか仕えず、北条家の滅亡後は江戸周辺を荒らす盗賊に落ちて、最後は捕縛され処刑された。組織に属し、組織とともに消えた忍者たちです。
今後風魔一族が出る可能性もあるんじゃないかと思っています。
九郎という名。仕える者と仕えられる者の関係。組織が崩れたときに忍者はどうなるのか。アンダーニンジャで今まさに進んでいる話と、あまりに響き合います。雲隠一族が何者なのか、なぜ九郎にあれほどの装備が与えられたのか、その答えがこのあたりに接続していくのではないか、と思っています。
繰り返しますが、根拠のある話ではありません。ただ、飛び加藤にしても風魔にしても、花沢先生が忍者の歴史や伝承を相当読み込んだうえで名前を選んでいるのは間違いないと思っています。だからこそ、拾える手がかりは拾っておきたくなります。
アンダーニンジャはいつ完結するのか
最近、同じ花沢健吾先生の「アイアムアヒーロー」を読み返しました。あれは22巻で完結しています。過去作の巻数だけを見れば、花沢先生は長期連載型の作家ではありません。「ボーイズ・オン・ザ・ラン」も「ルサンチマン」も、そこまで長くはありませんでした。そう考えると、アンダーニンジャも20巻台で終わる可能性は十分あります。
アイアムアヒーローには後日談があり、今買うと完全版になっています。完全版では描き下ろしも追加されています。最初に読んだときは、え、ここで終わり、という感じがしたんですが、読み返すと、あれはあれでいい話だったんだな、と思える終わり方でした。すべてを解決してくれるわけではありません。アンダーニンジャの結末も、そういう手触りになるかもしれません。
25巻あたりで終わるという予想
ここからは完全に予想です。僕は25巻前後で完結すると読んでいます。ここから数巻で一度すべてがぐちゃぐちゃになり、そこからクライマックスを迎えて、25巻前後で畳むのではないか、という筋です。18巻を読んだ今の感触は、まさにその大混乱の直前です。
8巻までに撒かれていたものが、18巻まで読んでようやく意味を持ち始めます。そして今、最終決戦へ向けた仕込みが始まっています。
17巻で果心居士の正体が明かされる
17巻では、謎のままNINの頂点として描かれてきた果心居士の正体が明かされます。
正体そのものはここには書きません。ただ、僕は17巻の直前にもう一度全部を読み返していたおかげで、二択には絞れていました。ヒントを一つだけ出すなら、「家」です。読み返すと、登場人物たちが繰り返しその家の違和感に言及しているんですよ。生活感がないな、ものがないな、殺風景だな、なんでこんなところが空くんだろう、と。
怪しいと思わなかった方が逆に怪しいくらい、違和感は撒かれていました。それでも、実際に姿を現したときは怖かったです。単に名前がすごいだけじゃなく、実力もちゃんとあります。ラスボス級の存在が、ついに表舞台に出てきました。ここから、それに勝つための準備が始まります。
こんなに面白いのになぜ話題にならないのか?
不思議なのは、自分の周りでまったく話題になっていないことです。アンダーニンジャ面白いよね、という会話を聞いたことがありません。
マンガ大賞2021の一次選考には選ばれています。それでも、映画化・アニメ化までされた作品なのに、周囲で話題になることは少ないです。あ、アニメ化してたっけ、と言われるレベルの認知度です。
それだけ作品を広げようと動いた人たちはいたはずです。だからこそ、映画のテイストと、本当にこの漫画にハマる層が少しずれてしまったのが惜しいところです。

顔を隠す忍者漫画、最大の弱点
この漫画の最大の欠点も書いておきます。忍者なので、ガチで顔を隠すんですよ。結果、今戦っているのが誰なのか分かりにくいところです。冒頭の相関図や人物紹介に戻れる人には最高ですが、サッと流し読みしたい人には向きません。
なめている人ほど、読んでみてほしいと思います。大人こそ楽しめる漫画です。「坂の上の雲」や「竜馬がゆく」しか読んだことがない人に、司馬遼太郎に幻術使いの話があるんですよ、と言えます。それだけでも、ちょっと得した気分になります。
いつまでも続くと思うな、漫画道。読むなら今です。

