#171 夢を叶える「事務」の力:坂口恭平『生きのびるための事務』読書感想編

皆さんこんにちは。今回は坂口恭平さんの『生きのびるための事務』を読んだ感想をお話します。共通の友人から勧められたのがきっかけで、一週間ほどで読み終えました。

先に言っておくと、私は坂口恭平さんについて深くは存じておりません。熱狂的なファンがいそうな雰囲気は感じますが、あくまでバックグラウンドを知らない立場からの感想となります。

坂口恭平と私

坂口恭平と関わることない人生でしたが、過去に一度だけ名前を知るキッカケがありました。

坂口さんの著書『独立国家の作り方』が話題になった2012年、当時好意を寄せていた女性がこの本に感化されてベタ褒めしていました。

内容については一切触れず、筆者の魅力に触れ、ビジュアルが良いこと、早稲田の理工学部出身のインテリであることを知りました。

要は、嫉妬していたのです。

結局、彼の著書を一冊も読まずに12年の時が経ちました。

当時のことは過去の記憶となりましたが、懐かく思い出しつつ、初めて著書を手に取りました。

『生きのびるための事務』とは?

今回初めて坂口さんの本を読んだわけですが、『生きのびるための事務』は自己啓発系の本です。

「ジム」というキャラクターが登場し、著者と「ジムさん」との対話を通して、夢を叶える方法が語られます。これは、夢を叶えるゾウにおけるガネーシャのような存在であり、「ジム」というキャラクターとの対話を通じて、夢や目標を叶えるための実践的な方法論が語られます。

この「ジム」は、坂口さんの頭の中で作り上げられた人格のような存在で、まるで『夢をかなえるゾウ』のガネーシャのような役割を担っています。少年と老人の対話スタイル、あるいは神様や悪魔との対話といった形式にも似ています。

”ひすいこうたろうさん”や”さとうみつろうさん”といった、自己啓発書を多く書いている作家の雰囲気も感じました。これらの作家に共通するのは、オリジナルソングを出すことで、坂口さんの本もAudible版で聴いたところ、最後にオリジナルソングが流れてきました。

ただし、内容はより現実的で、抽象的な目標を「事務的」な手法で具体化していくというアプローチが特徴的です。

例えば、「夢をビジュアライズする」や「やりたいことリストを書く」といった感覚的な方法に留まらず、数字や計画といったロジカルな手法を用いて、実際に目標を達成するためのステップを提示しています。この「事務」という切り口が非常に新鮮です。

挿絵やデザインの魅力:視覚的な楽しみも加えた構成

ここでいう「事務」は具体、数値、ロジック、計画、左脳、などと言い換えられるかもしれません。

仮にこれが「生き延びるためのロジック」といった堅苦しいタイトルだった場合、読者層が変わっていたかもしれません。親しみやすいネーミングやキャラクターが絶妙だと感じました。

さらに特筆すべきは、挿絵や漫画的なデザインがふんだんに盛り込まれている点です。漫画家・道草晴子さんによる絵が本書の親しみやすさをさらに高めています。

この要素があることで、活字だけの啓発書にハードルを感じる人にも門戸を広げています。内容そのものが平易であるのに加え、このデザインが、自己啓発というテーマを「取っ付きやすい」ものにしています。

記憶に残る「最高の1日のスケジュール」

本書で特に印象に残ったのは、「最高の1日のスケジュールを立てる」という章です。坂口さんと「ジム」との対話形式で、理想的な1日の過ごし方を具体的に描いていくプロセスが紹介されています。

「何時に起きたいですか?」という問いに、「午後5時くらいに起きたいな」と答え、そこから「熱々のコーヒーを飲む」「散歩をする」「執筆作業をする」と続きます。昼には「日を浴びながらお昼寝をしたいな」と答え、夜は「9時か10時に寝たい」と締めくくる。

こうした「理想の1日を可視化する」という作業は、実際に今すぐできるシンプルで効果的な方法として響きました。

価値観の棚卸しをし、自分の優先順位を明確にすることで、理想のスケジュールを実現可能な目標として設定する。このメソッドは、日々の生活に取り入れやすいと感じました。

著者自身の成功体験が活きた構成

また、本書は単なるノウハウ本ではなく、著者自身の成功体験が織り交ぜられている点も興味深いです。坂口さんが無名の状態から作家やアーティストとして活動を広げていった経緯が描かれており、読者にとっては共感しやすく、勇気を与えられる内容になっています。

他の選択肢との比較

『生きのびるための事務』は、スピリチュアルな押し付けを感じさせず、内容を噛み砕いて伝える点が魅力です。

本書を読みながら、過去に読んだ「世界へはみ出す 日本でダメなら、海外へ行く。」を思い出しました。その内容も、柔らかいイラストと具体的な体験談を交えながら読者を引き込むスタイルでした。

『生きのびるための事務』もまた、そうした「伝え方」や「噛み砕き方」が巧みで、似た雰囲気を持つと感じました。

まとめと感想

全体を通して、『生きのびるための事務』は、非常に親しみやすい語り口と実践的な内容が特徴的な一冊です。誰にでも届く形で構成されており、まるで漫画のように読みやすいという点が魅力です。内容そのものが新しいというより、伝え方の工夫が光る作品だと感じました。

全体を通じて、『生きのびるための事務』は「夢」と「事務」という一見相反する要素を見事に融合させた一冊でした。これまで坂口さんに距離を感じていた方にも、ぜひ手に取っていただきたい作品です。

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