#44 訪問看護師が語る「大卒」と「専門卒」看護師の違いと就活事情

健康な人には無縁の病院。そこで働く看護師の人々はいかに看護師になるのか?看護学は大学でも専門学校でも学べるけど、違いは一体なんなのか?就活はどのようにやっているのか?手術室看護師と訪問看護師を経験した「ジョージさん」にお伺いしました。

*訂正
オペで使用する服装の色が青と緑の理由を「照明」と言っていますが、正しくはと「血液の赤が目に焼きつくのを防ぐため」でした。また、日勤の看護師の平均は6〜10人程度みたいです。

今回は、訪問看護師として活躍されているジョージさんにお越しいただき、看護師としての経歴や看護業界の実情についてお話を伺います。


看護師を志したきっかけ

ジョージさんが看護師を志したのは、高校生のときの職場体験がきっかけでした。医師になるには学力が足りないと感じた中で、偶然知った「看護師」という職業に興味を持ち、職場体験に参加。そのとき、ある看護師から「看護師に必要なのは優しさで、学力だけではない」と言われたことが心に響き、「自分にもできるかもしれない」と感じたそうです。

彼が心を打たれたのは、精神科の病棟で患者さんが叫ぶ姿を見たときのことです。看護師が「叫ぶという行動は、その人にとって重要で大切な表現」と説明したことで、患者の思いや行動を尊重する看護師の姿勢に感動。これをきっかけに「自分もこうした考え方を持てる看護師になりたい」と強く感じたと語ります。


大卒と専門卒の違いが生まれる背景

大学看護学部の教育体制

大学の看護学部では、看護師国家資格取得を目指しつつも、余裕をもった4年間のカリキュラムで学ぶため、学生はアルバイトやサークル活動を通じて多様な人と接する機会が多くあります。ジョージさんは「大学生は、コミュニケーションスキルや柔軟な考え方が身についている」と感じるといいます。

専門学校の教育体制

一方、看護専門学校は3年制で、カリキュラムが詰まっており、学業と実習が中心です。国家試験前も休みなく実習が続き、時間的余裕が少ないため、生活面での幅が狭くなりがちです。その結果、専門学校卒の看護師は「実務重視のスキルがある一方、教科書や経験に基づいた考えを強く持ち、突き進む傾向がある」とジョージさんは語ります。


大卒看護師が得られる追加資格

大学で看護を学ぶと、統計学などを含む看護研究を学び、患者の状態を感情に流されず分析的に評価するスキルが養われます。ジョージさんは、これが「専門学校卒との大きな違い」と指摘します。

また、大学では看護師資格に加え、保健師や助産師の資格を取得できるカリキュラムが組まれていることも大きな特徴です。保健師資格は、地域社会での保健業務に役立つため、将来的に看護師としての幅広いキャリア選択が可能になります。


看護師志望の「動機の違い」が現場に与える影響

ジョージさんによれば、看護師を目指す理由にはさまざまな背景があり、大卒・専門卒問わず「使命感を持つ人」と「消去法で選んだ人」とに分かれることもあるといいます。使命感をもって看護師を志した人は患者中心のケアを提供しやすい一方で、安定した職業として看護を選んだ人の中には、割り切って仕事をこなす姿勢の人もいるようです。

看護師を目指す際の「動機」や「価値観」が現場での仕事観や患者への対応に影響を与えるため、患者や同僚とのコミュニケーションにも違いが出てきます。


増える看護学部と看護師業界の今後

少子高齢化が進む中、看護師の需要は増加しています。大学も定員確保のために看護学部を設置するケースが増えており、大学卒の看護師が主流となりつつあります。ジョージさんは、「大学卒が増えることで看護業界の知識やスキルが向上する一方、現場での考え方にも変化が生じるかもしれない」と話します。

看護師の資格と役割の違い

看護師の資格には大卒と専門卒がありますが、その役割や知識の幅には大きな違いがあるようです。たとえば、大卒の看護師は「看護師」だけでなく、場合によっては「保健師」や「助産師」としての資格も得られます。助産師は、出産をサポートする専門的な資格で、お医者さんの立ち会いがなくても助産院で出産に立ち会うことができます。このように、看護師といっても知識の幅や実務での役割に違いがあるのです。

自然分娩と帝王切開の違いと費用面

出産の方法についても、自然分娩と帝王切開では費用の扱いが異なります。自然分娩の場合は保険適用外で、費用はすべて自費負担です。

一方、帝王切開は医療行為として認められるため、保険が適用され費用が抑えられます。また、帝王切開では麻酔が使われるため痛みが少なく、体への負担も軽減されます。出産に関する費用負担の違いについては、多くの人が「矛盾」と感じるポイントでもあるでしょう。

大学での看護教育と専門学校の違い

専門学校では、看護の技術を集中的に学ぶカリキュラムが組まれており、卒業と同時に看護師資格を取得できます。しかし、大学では4年間の中でさらに幅広い教育が行われ、看護に関する専門的な知識のほか、保健師や助産師といった他分野の教育が行われます。ただし、助産師資格は法律上、男性は取得できないため、男性は保健師資格を目指すことが多いです。

大学生活においては、看護以外の授業や活動にも参加できる余裕があり、多様な経験を通して人間的な幅が広がることが特徴です。多くの学生が、部活動や課外活動を通じて、医療現場以外のスキルを身につけることも可能です。

大学卒と専門卒の現場での違い

実際の現場に出ると、大学卒と専門卒の看護師には、経験やコミュニケーション能力の差が出ることがあります。特に、アルバイトなど外の社会と関わってきた経験が豊富な人は、患者さんとのコミュニケーションが得意で、医療現場での評価も高くなる傾向にあります。訪問看護師の経験からも、単に学業成績が優秀なだけではなく、社会経験やコミュニケーション力が重要だと感じることが多いです。

保健師としての仕事の内容

保健師の資格を取得すると、地域の保健所や公衆衛生の分野で働くことができます。例えば、地域の健康状態を把握し、統計データを元に、がんや心臓病などの疾患の予防対策を行います。

保健師は地域住民向けに健康教室を開催し、健康促進や病気予防のための指導を行います。病院勤務の看護師とは異なり、保健師は公衆衛生の分野での活動が主な仕事です。

ICUなど特定分野でのキャリアパス

医療現場では、集中治療室(ICU)などの急性期病棟で働くことが、ある意味で「トップ」とされるキャリアパスと見なされることがあります。急性期の病棟では、特に命に関わる患者さんを看護するため、高度な技術や迅速な判断力が求められます。外科や心臓血管外科、麻酔科など特定の専門分野へ進むこともありますが、どの分野でキャリアを積むかは個々の志向によって異なります。

大卒と専門卒の看護師には、それぞれの経験や知識に基づく役割の違いがありますが、どちらも現場での経験を通じて医療のプロフェッショナルとして成長していきます。訪問看護師の立場から見ると、医療知識だけでなく社会経験やコミュニケーション能力が、実務において大きな影響を与えていることが分かります。

看護師の就活事情:面接はいつ頃から始まる?

看護師の就職活動は、卒業見込みがある段階から動き始めます。通常、4年制大学の場合は4年生の10月頃から病院見学や面接が始まり、国家試験の合否が判明する2月から3月には採用がほぼ内定されることが多いです。

看護師の就職市場では慢性的な人手不足が課題となっているため、面接に合格しやすく、学生側が病院を選ぶ傾向があります。

専門卒看護師と大卒看護師の就活における違い

専門卒と大卒で就活に差はあるのでしょうか?大きな差異はあまり見られませんが、大卒の場合、教育やキャリアアップの環境が整った大学病院や総合病院を志望する傾向が強いです。

一方、専門卒の看護師も実践的な現場経験を積みやすい環境を選ぶ傾向があり、両者がそれぞれの学びや目的に応じた施設を選んでいるようです。

看護師の配属先選び:大病院かクリニックか?

就職先を選ぶ際には、大学病院や総合病院といった大規模医療機関、あるいはクリニックや個人病院といった小規模施設という選択肢があります。

一般的に、キャリアの初期には多くの看護師が大学病院や総合病院などでの経験を重視する傾向があります。これらの大病院では、急性期医療や手術室での業務など、幅広い知識とスキルが求められるため、看護師としての基礎力をしっかりと養うことができるからです。

大学病院や総合病院での教育体制と職場環境

看護師の教育体制において、大学病院や大規模総合病院では教育プログラムが充実していることが多く、若手看護師にとって学びの場が豊富です。

ただし、教育体制は整っていても、現場と管理部門(総務課など)との間で意識のギャップが生まれることもあります。労働環境を改善しようという総務課の意図が、現場では必ずしも実践されないこともあり、看護師の職場での負担感は少なくありません。

体育会的な教育体制とその影響

一部の病院では、指導方法が「体育会的」と表現されることもあります。これは、看護師が疑問を抱いた時に「自分で考えろ」や「以前教えただろう」といった指導を受けることを指します。このような教育体制は、特に経験の浅い看護師にとって精神的負担が大きく、柔軟な指導が求められる昨今では課題とされることも多いです。

訪問看護師を目指す理由:働きやすい職場を求めて

ある訪問看護師は、働きやすい職場環境を求めて訪問看護師の道を選んだといいます。訪問看護の現場では、若いスタッフが多く、柔軟な指導方法が取り入れられています。教科書的な知識だけでなく、実践に即したアドバイスが行われることで、看護師一人ひとりが働きやすさを感じられる職場環境が整っているようです。

訪問看護師の教育体制:若手スタッフが担う指導

訪問看護の現場では、従来の「先輩の背中を見て学べ」という指導方法ではなく、若手スタッフが中心となって教える風潮があります。看護師の成長を助けるため、指導は教科書や実務経験に基づきつつも、丁寧に行われ、看護師の自主性を尊重する教育体制が整っているのが特徴です。こうした柔軟な指導方針により、訪問看護ステーションは新しい知識と技能を習得できる場となっています。

給与に見る病院内ヒエラルキー

一見すると、看護師同士の給与に大きな差はありません。しかし、配属される部署によって、実は大きな違いがあるのです。例えば、手術室勤務の看護師は日勤中心で、緊急手術がない限り土日休みが保証されています。しかし夜勤が少ないため、給与は一般病棟や夜勤が多いNICU(新生児集中治療室)勤務の看護師に比べると低めです。

NICUの夜勤事情と給与への影響

NICUは、生まれたばかりの乳幼児を24時間体制で見守る必要があり、日勤と夜勤の人数がほぼ同数に保たれています。そのため、NICU勤務の看護師は夜勤が頻繁に発生し、一般病棟よりも夜勤手当が高くつくのです。このように夜勤が多い分、手取り給与が増加し、同じ看護師でも部署によって収入に差が出ます。

手術室看護師と病棟看護師の働き方の違い

手術室で働く看護師は、日勤が中心であり、緊急手術のない限りほぼ定時で仕事を終えられます。手術室勤務の看護師は、手術に特化した知識を新たに学ぶ必要がありますが、一度ルーチンを覚えてしまえば安定した業務が可能です。そのため、体力的には楽と感じる看護師も多いようです。

一方、病棟勤務の看護師は、日勤と夜勤が交互に組まれていることが多く、肉体的にも精神的にも負担が大きくなりがちです。日勤が終わった後に数時間の休憩しか取れず、そのまま夜勤に入ることもあり、長時間労働に苦労する看護師も少なくありません。

ライフプランに応じた配属先の選択

看護師が働きやすい環境を選ぶ上で、ライフプランや働き方の希望を考慮することが大切です。たとえば、安定した給与よりも働きやすさを重視したい人には手術室が合う場合もありますし、収入アップを望む人にはNICUや一般病棟の夜勤が多い部署が選ばれる傾向にあります。

まとめ:看護師が自分に合った働き方を見つけるために

看護師として働く場にはさまざまな選択肢があり、大学病院や総合病院での幅広い経験が重要視される一方、働きやすさを重視する訪問看護という道もあります。自身の働き方に合った職場を見つけるためには、教育体制や職場環境を実際に見学したり、経験者に相談したりすることが有益です。

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